月刊ガンガンWING連載 スクウェア・エニックス既巻10巻 小島あきら作

「まほらば」とは、「大切な場所」という意味で、内容もその意味に沿ったものになっています。「まほろば」でも同じ意味ですが、漫画のタイトルとしては別物で、関係はありません。(よく間違われるそうです。私も始めてみたときはまほろばと関係があるのかと思いました。)

「鳴滝壮」というアパートを舞台に物語が展開します。この鳴滝壮は、東京都内にありまわりはビルという状況で、広い敷地に昔ながらの下宿のようなたたずまいを残している都内にはまずなさそうな珍しいアパートです。住人全員が家族のような関係にあり、その住人達のふれあいを描いたハートフルストーリーです。不倫や浮気といった修羅場はまずなく、全ストーリーまったりとしたものです。

この作品でメインとして認められるひとつの基準として「名前がつくこと」ということがあります。名前のないキャラは「脇役」としてコミックスカバー裏の脇役天国へ登場します。これはあまり名誉なことではなく、キャラたちはカバー裏でのたうち回っています。最近は特に名前がないことにこだわった話になっています。名前がつくと追放されます。

この作品のテーマに「解離性同一性障害」というものがあります。いわゆる「多重人格」というもので、ヒロインの青葉梢がこの病にかかっています。しかし実際の多重人格のように深刻なものではなく、本人も多重人格であることに気づいていません。気づいていないのは

  1. 本人が鈍いこと
  2. 周りが悟らせないようにしていること
  3. 自分自身を傷つけてしまう人格がないこと

などが原因のようです。治してあげたいならフォローしているより本人に告げて通院したほうがいいと思うのですが、なぜか誰も行おうとはしません。人格が変わることを楽しんでいる様子もあります。梢の人格は主人格を含めて全部で5つです。5つも人格ができるからにはかなりのことがあったと思われるのですが、今のところその原因は明らかにされていません。

この作品は日常生活を描いたもので、人格が変わることは余りありません。病気自体には深くは追求していません。病気のことは気にせず純粋に楽しめると思います。

ガンガンWING誌上では2月から表紙をキープし続けています。アニメも放映されており、今のりにのって絶好調です。アニメは設定が放送するのに問題があるとかで変えられており、ファンの顰蹙を買っています。原作の雰囲気をうまく持ち込んではいますが、いまひとつな点が多いようです。声優も以前発売されたドラマCDのときとは変わっています。

この作品は興奮するものではありませんが、落ち着いた気分になれます。風呂上りや寝る前などに読むのがお勧めです。

主な登場人物

白鳥隆士 本作の主人公。絵本作家を目指して専門学校に通っている。学校まで遠いために第一話で鳴滝壮に入居してきた。鳴滝壮の住人に振り回され続き手でていこうかとも考えていたが、今ではすっかりなじんでいる。自分の女顔を気にしており、恵によって女装されられたときはどこから見ても女の子だった。よく妄想が炸裂する。
蒼葉梢 鳴滝壮大家で現役女子高生でもある。資格はほわほわで、人とは少し変わった趣味をしている。「かわいい」と思う基準は独自のものがあり、人によっては引いてしまう。多重人格者で主人格を含め5つの人格があり、精神的ショックや物理的ショックを与えると違う人格が出る。人格が変わると髪形が変わる。好物はうめぼしで、梅と名のつくものなら何でも食べる。アニメではすべての人格で好物になっている。
赤坂早紀 蒼葉梢の第2の人格。性格はがさつで凶暴。酒好きのようだが梅酒以外は飲めない。最も早くに登場した人格で、初期のころはよく登場したが、人格が増えるにつれて登場回数が減り、最近では回想シーンの1コマくらいにしか登場していない。宴会好きで虫が苦手。
金沢魚子 蒼葉梢の第3の人格。精神年齢が6歳であり、どんなものにも興味を持つ。はじめてあったときに白鳥に興味を持ち、完全になつかれている。本人は6歳のつもりだが、体は16歳なので擦り寄られる白鳥は平静でいられない。灰腹のジョニーの天敵でもあり、登場するたびにとられてないている。
緑川千百合 蒼葉梢の第4の人格。正しい服飾と称して住民にコスプレを強要する危険な人物。初登場時は1コマのみ登場して次の回ではいなくなっていたので本格的に登場したのは棗の後になる。強制的に彼女の好みの服に着替えさせる全人格の中で最も危険な人物だが、着せ替えをするのは「嫌がる女の子」のみ。口調は理論的だが言ってることはめちゃくちゃ。
紺野棗 蒼葉梢の第5の人格。最もおとなしく個性が少ない。極度に人見知りし最初は一言もしゃべらず名前すらわからなかったが、白鳥と打ち解けて以降は徐々にしゃべるようになった。手品が得意で喜ぶと頭から花が咲く。
桃乃恵 鳴滝壮のムードメーカー。物語の進行役のような役割で、住人総出で出かけるときも彼女が計画する。現在大学生だが休学中で毎日アパートでゴロゴロしている。宴会好きでどんなところでも騒ぎ出し、ほぼ毎日宴会している。彼氏とは遠距離恋愛しており、もう1年近くあっていないようだがずっと思い続けており、普段の言動に反して結構純情である。前説やあとがきではドクター・ピンクとして登場する。
茶ノ畑珠実 梢と同じ高校に通う女の子。梢のことをもっとも身近で見つめ続けていた人物で、他人格が出るたびに周りにフォローし続けていた。そのためか梢に対する思いはもっとも強く、自分が女であることを悔やむほどである。超人的な身体能力を持っており、スポーツ全般すべてをこなし、大の男を一撃で気絶させるほどの能力がある。これにより梢に害をなそうとするものはすべて排除している。趣味は写真撮影(隠し撮りが多い)。毒舌。
黒崎沙夜子 常に無気力。家で内職をして生活しているが、ほとんどやっている様子はなくサボって寝ているので、大部分は娘の朝美がやっている。実家は大きいが、駆け落ち後はずっと絶縁状態だったようで、何らかの支援を受けていた様子はない。夫は駆け落ち後にすぐに事故死しており、「黒崎」は夫の姓である。朝美が3歳のときの再婚相手だが、このとき制服を着ていたので高校生とすると、現在は26歳くらいと思われる。娘の朝美とは血がつながっていなく実の親子ではないが、そんなことを気にしているものは誰もいない。好物は水ようかん。木彫りがうまい。
黒崎朝美 中学一年。もともと孤児院にいたらしい。母親の沙代子が無気力で働かないため、日夜貧乏と戦い続けている。部屋には内職用のダンボール以外は何の家具もなく、すべてダンボールで代用しており、ダンボールで寝ている。料理も道に生えている草でも使うほどの徹底振り。内職もほとんど彼女一人でやっており、働きながら学校に通う苦学生と同じであるが、鳴滝壮の住人やクラスメートの助けなどで、貧乏でも幸せな毎日を送っている。
灰原由紀夫 いつも右手にジョニーを持っている。ジョニーを使って腹話術をし、ジョニーを介さないと話すことができずふきだしもジョニーから出ている。いつもなる多岐そうにいるが、職業は何かわからずどうやって生計を立てているのか謎で、毎日恵と宴会している。また中庭の井出で釣り糸をたれているが、魚はつれないらしくああやっているのが好きなだけらしい。鳴滝壮メンバーの中では最も陰が薄く、キャラ紹介でもいつも省かれる。読書好きのようで、実は小説家なのかもしれない。
まほらば

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