家庭(8) ―人工授精・試験管ベビー―
- 誰かが、すべての結婚者は子どもを持つ権利があると言いましたが、この肯定は正しくありません。
次のように直すべきです。
「もし神さまが子どもを生む能力を与えてくださり、また正しい方法を使うならば、子どもを持つ権利があります」
- 結婚してから数年間子どもが出来なかった配偶者が、生殖不能であるかどうかを調べるために診察を受けることは勧められます。
ときには生殖不能ではなく、女性の生殖器の奇形(例えば子宮頚管の狭すぎること、卵管が詰まっている、など)のために受精が不可能である可能性があります。このような場合は、ごく簡単な治療によって受精が出来るようになります。
- もし自然に受精が出来ないなら、夫婦の交わりを行ってから、機械的、あるいは化学的に助けることは許されます。この場合には、自然に反することではないからです。
- 問題は、一人(あるいは二人)の配偶者は生殖不能であるから、他の人の配偶子を使うときです。
それは自然であっても、凍結しても、生きた人のものでも、死者のものでも、同じく禁じられています。なぜなら、そういった場合には、両夫婦の子どもではないゆえに、結婚に反することだからです。
夫婦は生殖不能ではなくても、生殖器の奇形のために、夫婦の交わりなしに精子を直接子宮か卵管に入れることはいけないのです。
なぜなら、教皇様方が教えたように、「子どもは自然に行われる夫婦の交わりと、それに伴う精神的な感情と霊的な愛による行いの実り」だからです(ピオ十二世 1957年5月19日)。
ヨハネ・パウロ二世も、「人間の受精を行うときは、夫婦の性的な交わりと霊的な愛を分けることは出来ない」と教えました(1983年10月29日)。
- 試験管ベビーについて教会はどう考えているのでしょうか。
ご存知のように1978年、イギリスでエドワード(Edwards)とステプトウ(Steptoe)の医者たちによってはじめて試験管ベビーが出来ました。
その子の名はルイス・ブラウン(Louise Brown)でした。報道機関はこれを広く発表したのであります(1984年に世界中に存在していた試験管ベビーは 590人でした)。
1987年5月にノーフォルク(Norfolk)バージニアUSA(Virginia USA)において、『試験管内配偶子合体』について学会が開かれました。
それによりますと、この方法で子どもを得ようと試みた女性の9%だけが成功しました。流産は26.2%であり、早産の可能性は自然の妊娠の3倍であります。
配偶子が夫婦のものであっても、次の理由によって試験管内配偶子合体は不道徳であります。
- 胚は受精の瞬間から人間です(ワーノックWarnockの報告によれば、受精から14日目より人間であると言いますが、これは何の根拠もありません)。
成功させるために普通は、一つ乃至四つの卵子を受精させます(普通は二つ以上)。換言すれば、ついに着床させる胚はひとつだけですから、余ったものは処分するか、
それとも夫婦の許可を得て関係のない方に提供するか、実験のために使われるかします。
すなわち、この行いは人間の崇高な命を物として扱うか、捨てることになります。これは遺伝子工学の行いだけであって、許されないことです。
- 上述したとおり、新しい人間の受精は夫婦間の交わりから始まるべきであります。この交わりは全人間によって行われるべきであります。すなわち、体、精神、霊魂ともに愛を表わすべきであります。
- 試験管ベビーの精神的な成長についてのデータはありません。しかし妊娠中にショックを受けた母の子や愛をもって受け入れられなかった胎児は、
生まれてから精神的な異常がある率が高いように、試験管ベビーにもそれがあるだろうことが恐れられます。
- 借り腹については、不道徳であると言わざるを得ません。他方では法的な問題が、ときどき起こったこともあります。
- 自然に、あるいは許される方法で子どもが出来ない夫婦は、
養子を受ける可能性があります。その養子を、愛をもって自分の子どもとして育てるならば、大きな慰めが得られます。
また、キリスト信者は、子どものない犠牲を神さまに差し上げて、他人の子どもを助けるよう尽力すれば、大きな喜びを味わうことが出来ます。
(H03.11.16 年間第33主日)
