家庭(28) ―教区の教会裁判所―

  1. 各教区(あるいは一管区内の数教区)にはいろんな問題(結婚問題をも含めて)を扱う教会裁判所があります。 この教区裁判所は『第一審裁判所』と呼ばれ、そこで受けた判決について教区が属する大司教区にある『第二審裁判所』に控訴することができます。 またさらにすべての事件に対する判決をローマ聖座にある最高裁判所ともいうべきところに控訴する可能性もあります。
  2. 結婚問題の訴訟は、普通、主任司祭の事件に関する記録から始まります。その記録は結婚問題のある信者の説明、並びに司祭が調べた資料に基づきます。関係のある立証、書類、並びに信者が述べたことを裏づける資料などを教区裁判所に送ります。
    この裁判所には裁判官、公益保護官、絆の保護官、並びに公証官からなっています。
    問題のある結婚者はこの裁判所に呼ばれ、一緒に、あるいはそれぞれ問題について証言しなければなりません。
  3. 結婚者が離婚した場合には、その結婚には何か異常なことがあったはずです。その異常は、あるいは一人の配偶者の不道徳な行いによるか、他のときにははっきりしない理由によります。
    上述したとおり、見込みがないと思われるときでも、司祭に相談するように勧められます。
    また、司祭が事件をよく調べて、あまり重くない理由によって離婚したと思っても、書類を教区裁判所に送るように勧められます。なぜなら、少なくない場合には、 その結婚ははじめから無効であった可能性があるからです。この場合は初婚が無効であった以上、信者の方はまた結婚することができます。
  4. 結婚が無効になる理由はいろいろありますが、おもなものは次のとおりです。
    1. 一方の配偶者に結婚する意思がないとき。
      意思は見えないものですから、それがなかった証明は難しいと思われますが、ときどきその人は友だちに気持ちを打ち明けていた場合、その友だちは証人になれます。
      ときには相手の日記などに結婚する意思がないと書いていることを偶然に発見する可能性もあります。
    2. 圧力や恐怖。
      場合によって両親は、自分たちの選んだ相手と結婚するように子どもたちに圧力をかけて、それが長い間続くと、反対する勇気がなかったこともあれば、 第三者がだれかと結婚するように脅迫する(この脅迫は物理的或いは精神的な悪による可能性もあります)こと。そのとき、その圧力の度合いによって、結婚する承諾がなかった可能性があります。
    3. 欺瞞や偽り。
      一方が相手に大事なことを隠すとき。
      例えば、遺伝によって伝えられ、治療ができない重い病気にかかっているとき。あるいは、結婚生活に対する重い欠点があるのに、すべては完全であると言うこと。例えば、何かの欠点のために働くことが出来ないなど。
    4. 結婚生活の務めの無知。
      例えば配偶者に対する忠実、居住、お互いの助けなどを知らない場合。
      ある人は、結婚しても他の異性の人と居住して、配偶者を助けなくてもいいと信じるときなど。
    5. 未成熟。
      人間として熟していないから、他の人と一緒に生活が出来ない。気まぐれな態度をとって、結婚生活の務めを忘れて、子どもたちの世話をしないなど。
      その未成熟の度合いによって、結婚が無効であるときもあります。
    6. 親離れが出来ない。
      すなわち、配偶者の言うことを聞かず、いつも親の言うとおりに行うなど。
      この態度は結婚の本質に反します。創世記に書いてあるとおり、「人間は父母を離れて、女とともになり、二人は一体となる」(創2:24)のです。配偶者は自分たちの生活を営み、いつも親が言うとおりに行うはずではありません。
    7. 子どもを産まない決心をする。
      あるいは、子どもを生まない約束のもとに結婚すれば、その結婚は無効です。なぜならば、子どもを生み育てることは、結婚のひとつの重大な目的であるからです。
    8. 神の定め、あるいは教会の定めによる婚姻障害がある(知っていても、知らなくても)ときは、結婚は無効です。例えば、兄弟はその関係を知らなくて結婚すれば、 それは神の掟によって無効です。あるいは、従兄弟は教会の許可なしに結婚すれば、それも無効であります。
    他にもたくさんの例がありますが、以上のものがおもなものです。
  5. また、特殊な場合には、教会裁判所はある結婚を解消することもできます。

(H04.05.02 復活節3主日)top home