クラリネット協奏曲を1曲挙げよ、と言われれば、多くの人がこの曲を推薦すると思う。大好きな曲でよく聴いている。モーツァルトが亡くなる1・2か月前に完成している。
モーツァルトの友人に、アントン・シュタードラーというクラリネットの名手がいた。ザルツブルグ時代からの知り合いのようで、付き合いは長い。モーツァルトは、彼に頼まれて作曲した。K.581のクラリネット五重奏曲も同様の理由で作曲したようだ。
モーツァルトは『G管バセットホルンのための協奏曲 ト長調』というのを作曲しているが、未完成で終わっている。クラリネット協奏曲の第1楽章は、この曲から転用をしている。
クラリネット協奏曲も、本来はバセットクラリネットという楽器のために書かれたもので、現在のクラリネットでは低音域で出ない音があるようだ。現在用いられている楽譜は、B♭管、A管で演奏できるように書き改められている。
第2楽章を中心に哀愁漂う旋律もあるが、全体的にみれば、穏やかで、芳醇な音楽の悦びに浸れる秀作である。
私は、プリンツがクラリネットを吹いているベーム指揮のウィーンフィルのCDを持っている。ベニー・グッドマンが吹いているテープも持っている。カール・ライスターが吹いているもの評判が良い。カラヤン指揮のベルリンフィルのものか、マリナー指揮のものが良いかと思う。元来のバセットクラリネットを使った演奏も一聴の価値がある。
© February 6th, 2010 ちゐく たつく