バッハの無伴奏チェロ組曲は傑作だが、チェロの音色を初めて聴く人にはベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番を薦める。チェロとピアノが調和しながら、のびやかに歌う名曲である。
ベートーヴェンはチェロ・ソナタを5曲残している。第1番と第2番は25歳ころの作品で、作品番号5になっている。この第3番は37歳ころで、第4・5番も連作であり44歳ころの作品である。第3番は、『運命』や『田園』、ピアノ協奏曲第5番『皇帝』などと同じ時期に作曲されている。このころの作品群を「傑作の森」と呼んでいるが、その傑作の木の1本であろう。
1・2番のソナタは、ピアノの活躍が目立ち、チェロは伴奏のように扱われている。4・5番になると、渋くなりすぎて聴き込まないと良さが分からないかも。3番が一番華やかで聴きごたえもある。やはり、3・4・5番と順に聴き継いでいくのが無難か。
私はヨーヨー・マのチェロ、アックスのピアノのCDを持っている。うきうきした気分にさせてくれる楽しい演奏だ。
ロストロポーヴィチのチェロとリヒテルのピアノというのも歴史的な名盤である。男性的なベートーヴェンが聴ける。
© 魔笛別館 February 14th, 2010 ちゐく たつく